ロンドン大学インペリアルカレッジの医学部で行われたジョウレイ実験

(2004/02/14)

この実験は、ロンドン大学インペリアルカレッジの医学部において、被験者は医学生、研究者はジョン・グルゼリエ博士で実施されました。この研究成果は、催眠療法学会の学会誌に論文として掲載されたそうです (CONTEMPORARY HYPNOSIS誌 vol.20 Issue1, P25, 15P) 。このページはその論文の和訳テキストや解説資料を元に作成し、非常に大筋のみを解説しています。

画像:CONTEMPORARY HYPNOSIS誌 表紙

画像:CONTEMPORARY HYPNOSIS誌 背表紙 「25」のところにJohrei の文字が見える。

概要

学期試験前の48名の大学生をランダムに3つのグループに分け、

これをそれぞれ4週間受けさせました。

被験者に対しては、トレーニング前、トレーニング直後、およびトレーニング終了2〜3ヶ月後の時点で、気分判定、脳波測定および免疫特性の測定を行ないました。

免疫特性の検査と実験後の気分判定検査において、面白い結果が計測出来ました。

トレーニング方法

自己催眠トレーニング

経験のある臨床催眠治療師(イニシャルTL)が計画をたて行なった。トレーニングはまず、速やかにリラックスするためのシュピーゲルの眼球回転を学ぶことから始め、特定の免疫活動の視覚化(Spiegel, 1972)を組み合わせた。次に、よりゆっくりとリラクセーションに導く誘導法を同じように免疫活動の視覚化と組み合わせて教えた。また被験者全員に、視覚化も含め、リラクセーション誘導を録音した標準のテープを提供した。被験者には自分に合った方法を選ぶよう勧め、反応を確認した結果、すぐに誰もが好みの方法を選んで続けて用いた。基本的な免疫活動の視覚化については、すべての被験者には、急な不安に対しては呼吸コントロール法を(Laidlaw, 1994)、また心配事や迷いに対しては中断気晴らし法(IDP; Laidlaw, 1999)をその都度使うよう指導した。被験者には、最初の2週間は自己催眠を学ぶために1日3回、その後は1日1回実践するよう求めた。被験者に記録してもらった日記によれば、ほとんどの被験者は最初は1日1回以上行なっていたが、その後回数がいくらか減少していった。なお、トレーニング・セッションへの出席率は非常に良かった。

ジョウレイ

ジョウレイヒーリング法のトレーニングは、訓練を受けた実践者であり医者の資格ももっている日本人(イニシャルAN)が計画を立て実施した。トレーニング・セッションは4回で、ジョウレイ哲学と実践方法への導入を行なった。被験者には、パートナーと一緒に毎日ジョウレイを実践してもらい、トレーニングの最終段階では自己ジョウレイも教えた。被験者には、トレーニング期間の間は家でも誰かを相手にジョウレイを実践するよう求めたが、日記によれば多くの被験者が実行していた。平均の実行回数は1日1回弱で、4週間のトレーニング期間の終わりに向うにつれいくらか減少した。自己催眠とジョウレイのグループのこの期間の家での実行回数の変化は、それぞれ1日1.75回から1.31回に減少(自己催眠)、1日0.80回から0.72回に減少(ジョウレイ)であった。トレーニング後第2期である2 〜3ヶ月には、ほとんどの被験者は日記をつけるのを止めてしまい、自己催眠やジョウレイの実践も止めてしまったようである。

ニセのバイオフィードバック

対照として用いたリラクセーション・コントロールのグループは、週2回、合計8回のニューロフィードバックのセッションを受けたが、フィードバック信号が偽の信号であることは伝えなかった。1回のセッションは30分で、被験者には両耳と頭部中央に電極をつけ、肘掛け椅子に座ってリラックスしてもらった。被験者にはさらにヘッドフォンで、アルファ波が出たときには小川のせせらぎの音を聞かせ、シータ波が出たときには波が打ち寄せる音を聞かせた。セッションは通常のニューロフィードバックと同じように行なったが、聞かせた音は電極から実際に入力された信号とは無関係であり、あらかじめ他人を使って記録したものである。この方法は、本物のフィードバックではないにもかかわらず、リラクセーションを引き起こすことが知られている(Edger et al., 2002)。

実験結果

信用度

それぞれのトレーニングが、「効くと思うか?(トレーニング前)」「効いたと思うか?(トレーニング後)」というアンケート調査。やはり医学部の学生たちには、ジョウレイが最も「効かない」と思われています。

こちらは、トレーニング前の期待の有無とトレーニング後の期待の有無の組み合わせで4種類の所感を持つ人数をグラフ化したものです。ジョウレイは「(トレーニング前)だめそう、(トレーニング後)やっぱりだめ」の被験者(青のグラフ)の割合が最も多かったことになります。

NK細胞濃度計測

唯一、ジョウレイ法だけがNK細胞の濃度を上昇させています。

実験後の不安改善効果

実験後、数週間、および数ヶ月後にアンケート調査を行い、心の不安度がどれだけ解消されているかを検査しました。ジョウレイはおおむね良い結果を出しています。

どこが面白いのか

つまりこれは、3つのトレーニングのうち、ジョウレイが「もっとも不信に思われていた」グループであるにかかわらず、NK細胞の濃度の計測値(平均)は唯一ジョウレイが向上させ、実験後の不安解消度の成績も良かったという実験結果です。この実験は、世間で言われている、いわゆるプラシーボ効果の概念と正反対の結果を示しており、非常に面白いのではないかと思います。

この実験論文の結論箇所の文章です。

結論として、次の試験 (注:学生は実験の途中に学校の試験があった) が近づくにつれて実践量とその効果は減少したが、ジョウレイあるいは催眠を受けた被験者は共に、対照グループ (注:ニセのバイオフィードバックグループ) と比較して試験に対して全般的に良好に対処したことが分かった。自己催眠あるいはジョウレイの1ヶ月間のトレーニングは、被験者の不安、抑うつ、緊張を緩和する上で、対照の手法としたリラクセーションよりも効果的であった。ランダムに選択された対照グループは、特性不安を含む実質的にすべての尺度において効果が低かった。気分に対するジョウレイの有効性を調べた最初の研究として、この結果は、西洋医学と科学を強く信頼しジョウレイの可能性についてはおおよそ懐疑的であった大学生に対して、ジョウレイが有効であったことを示している。現在進行中で同時に報告することになっている、神経生理学的および免疫学的パラメーターを用いた研究が終了すれば、ジョウレイについてのより詳細な報告ができることになる。またそれらの研究は、今回の自己申告による気分評価についての有効性の結果を踏まえた上で実施されることになる。

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