筆遣い比較

では、筆のラインがどの程度精密に再現されているかチェックしてみます。

ラインの細さチェック 錫杖部分




(A)
錫杖の竿の部分をみてください。横線が入っていますが、その横線の太さ、本数が違います。また、錫杖の左側にあるなにか丸いものをみてください。放射状に書かれた線が、秀明版の観音様のほうはつぶれてしまっています。



(B) 錫杖のなかに四角い白抜きがありますが、その大きさ(太さ)が違います。なぜ違うかというと、錫杖を描いてる左右両側の線の太さが、秀明版とオリジナルでは違うからです。


(C) の丸い飾りをみてください。○の形、および中に書かれている模様?の形が違います。



(D) 錫杖の先を見てください。三角形の下に細い隙間が有ります。オリジナルの方は細い隙間がはっきりと表現されていますが、秀明の方はつぶれてしまっています。








以上のことから、秀明会のお屏風観音様は線の太さを忠実に再現できていないということがわかりました。なぜ再現できなかったのでしょうか?それは秀明版では描画できる線の細さに限界があるからなのでしょうか?

そのあたりを検証するために次のチェックに移りましょう。。。。なんか、線の太さなんか比べ物にならない重大問題がこの画像に山のように含まれている気もしますが、まあ気のせいでしょう

ラインの形状チェック

ライン一本一本の違いがもっともはっきりわかるのは、台座の蓮の部分だと思います。ここは「再現できる線の細さに限界がある」といった言い訳では説明不可能な、おかしな線が引かれています。

画像:台座部分比較

では細かい箇所を検証してみましょう。


中央部分 蓮の花びら
オリジナル 秀明版

上の記述で、「細い線が書けない」と言いましたが、よく見ると、(1) の上側の花びらの中はかなり細い線が再現できていますね。やはり「細い線は引けない」という言い訳はできないようです。しかしせっかく細い線を引いているのに、オリジナルの物とは線の様子も、花びらの中の本数も違います。 (2) の大きな花びらに至っては同じような線を書こうという意志すら感じられません。太さも本数も輪郭の線もでたらめです。輪郭線は下部ほど細く、右下部分はかすれているほどなのですが、秀明版はぐるりとどこもほぼ同じ太さです。それから、 (3) の上の花びらと下の花びらの接触部分も違う形ですね。

台座の線を太く書いたのは、線しか使用出来ないこの技法で、「墨で薄く着色されている」ことを表現するためなのでしょう。細い線を忠実に引いただけでは「墨で薄く着色されている」ような雰囲気が出ないからだと思います。


中央花びらの右隣
オリジナル 秀明版
(1)の上側の花びらの線は、オリジナルはS字型を描いていますが、秀明版は単なる弧を描いています。また、(2) の、上側花びらの中の線は、太さや本数どころか、もはや向いている方向すらちがいます。

中央花びらの右上の衣服部分
オリジナル 秀明版
(1)の衣服の2本のしわの形が違います。見方のこつは、線の1本1本を見るのではなく、線と線で囲まれた白い空間の形を見比べたら違いがよくわかります。 (2) のしわは、オリジナルは斜めに長いしわなのに、秀明版は横から来たしわと交差した時点で線が終わってしまっています(ピンクの点線の箇所が無い。)。これは「書き写した職人さん」が、渡された元画像がよく見えず、長くのびたしわではなく横から来たしわと(2)で囲まれた「穴」のようなものだと見間違えて書いてしまったのでしょう。(3)の、しわと蓮の花びらとの交差点は、オリジナル版はしっかり交差しているのに、秀明版は交差せず直前でとまってしまい、わずかな隙間が見られます。

取り急ぎ3つの場所に注目して解説をしましたが、秀明お屏風観音様がオリジナルと違う線の引かれている箇所は、3カ所どころではありません。はっきり言って線の一本一本、すべてが違っている、といっても過言ではありません。どうぞ各自で画像を並べてよく眺めてみてください。細かく解説していくのも馬鹿馬鹿しくなってきます。

秀明のお屏風観音様は、前のページで書いたとおり、[A] 金色の線で墨絵の濃淡、筆遣いなどが完全に再現されている。」ではありませんでした。そして、このページで解説したことから、「[B] オリジナルの観音様から画像処理を行って濃淡の要素を廃し、筆遣いのみを金色の線で再現している。」でもないことがわかりました。線の一本一本が明主様の書かれた物とは異なっているからです。

そうすると、秀明の観音様は、「[C]その他」であるわけですが、本サイトとしましては、「神慈秀明会のお屏風観音様は、明主様がお描きになった観音様そのものではなく、明主様の観音様を、誰かが、精密に描き写したもの」と断言したいと思います。この仕事は非常に緻密ですので専門の技術者の作業であると思いますが、あくまで手作業なのでこうやって拡大すると明らかな違いが見えてくるのです。また、描き写すときに使用した筆は、日本画を描くための絵筆ではない、なにか他のものではないかと思います。おそらく観音様を作った業者さんは、「金色一色でこの絵(観音様)を作ってくれ」といわれ、苦肉の策で自分で描いてしまったのでしょう。

では引き続き、比較を続けていきたいと思います。今度は観音様がお手に持っている品物や、お顔など、部分部分に注目して確認してみましょう。

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